よく聞く言葉だからこそ、もう一度整理してみましょう
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「読むカウンセリング」は、アダルトチルドレン(AC)やHSPなど、生きづらさを感じやすい方に向けた、セルフケアのための読み物です。
さまざまな心理療法や心理学の理論、そして、なりた自身がこれまでの出会いの中で培ってきた経験をもとに、時間をかけて丁寧に作成しています。
ページを読むこの時間が、あなたにとって小さなカウンセリングのような時間になることを願って、ひとつひとつの言葉を大切に綴りました。
遠くにいても、誰かが自分のことを理解しようとしてくれている。
そんな感覚を、少しでも受け取っていただけたら嬉しく思います。
「自分軸を持つといいよ」
――そんな言葉を、どこかで耳にしたことはありませんか。
人の顔色をうかがいながら生きることを、「他人軸にいる」と表現することもあります。
他人軸というのは、まわりの人の「期待」や「欲求」に、自分を合わせ続けるような生き方のことを言います。
でも、軸というあいまいな言葉に、落ち込むことはありませんか。
「こう言ったら、喜ばれるだろうか」
「期待を裏切らないだろうか」
「嫌われないだろうか」
こんなふうに考えているとき、「私は本当はどうしたいのか」「私は今、どう感じているのか」という自分の気持ちは、つい後回しになってしまいます。
評価のものさしが、いつも自分の外側・・・、つまり相手の方にあるので、安心も、不安も、他人の反応しだいで揺れやすくなります。
ただ、ここで先に、お伝えしておきたいことがあります。
それは、他人軸で生きること自体は決して悪いことではない、ということです。
相手のために何ができるかを考え、誠実に向き合おうとする。それは、「人を大切にしたい」という、その人なりの大切な思いの表れでもあります。
今回は、前編・後編の2回に分けて、この「自分軸」というあいまいな言葉を、いっしょに整理していきたいと思います。
前編では、「自分の気持ちに気づいていく」という、その入り口のところを、一緒に感じていきましょう😌
他人軸で長く生きてきた方の中には、こんな方がいると思います。
「自分が本当はどうしたいのか、もう分からない」
「何を考えているの? と聞かれても、心の中が空っぽな気がする」
ずっと、まわりに合わせて、自分の「嫌だな、こうしたいな」を引っ込めて生きてきた。
そして気づいたら、自分の気持ちそのものが見えなくなっていた。
——こうしたお話しは、カウンセリングでは決して珍しくありません。
でも、それはあなたが弱いから自分がしたいことを決められないのでしょうか?
少なくとも、私はそうは考えていません。
なぜなら、人の顔色に気づき、まわりに合わせていく力は、ちいさな頃に身につけた、この世の中を生きるための「術」だったのだと考えることができるからです。
まわりの機嫌に敏感になり、合わせることで、自分がいれる場所の安全ををなんとか確保してきました。
それは過去のあたなたが身に着けた「賢さ」であって、弱さではありません。
そして、その力が、大人になった今も、変わらずにあなたの心がこれ以上傷つかないように働いてくれている、とも考えることができます。
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では、見えなくなった自分の気持ちに、どうやって気づいていけばいいのでしょうか。
ひとつ、どうしてもお伝えしたいことがあります。
長く我慢してきた方ほど、「自分の気持ちに気づく」ということに、知らないうちに、とても高いレベルを求めてしまっていることがあるのです。
「ハッキリと“これがやりたい!”と思えなければ、本当の気持ちじゃない」というような感じです。
でも、ここで言う「気づき」とは、そういう意味ではありません。
長く自分を抑えてきた人は、心の小さな動きに、少し鈍くなっていることがあります。
だから、まずはほんの小さなものから拾ってみてほしいのです。
「これをしていると、なんだか心地いいな」
「この人といると、なんだか落ち着くな」
あるいは反対に、「これは、ちょっと嫌だな」「なんだか、気が進まないな」。
そういう小さな感覚を、「まあ、こんなものか」と、なかったことにしない。
その「ちょっと嫌だな」「ちょっといいな」こそが、あなたの“本当はどうしたいか”の、入り口につながっていきます。
変化の入り口は、「感じ取る気持ちのレベル」を、うんと下げてみてることから始めてみてほしいと願っています。
小さな「嫌だな」を拾ってみよう——そう思っても、今度はそれが怖いと感じる方もいると思います。
「自分の気持ちを出し始めたら、今ある人間関係が、壊れてしまうんじゃないか」
「せっかく良くしてくれているのに、嫌だなと思うことはいけないことではないか」
これまで、自分の「嫌だな」を引っ込めることで関係を保ってきた方なら、なおさらこうした「不安感」や「罪悪感」が顔を出すことがあります。
ここで、自分の気持ちを大切にすることの基準を考えてみたいと思います。
今のあなたの人間関係が、あなたにとって心地のよいものなら、それは、そのまま続けていっていいと思います。無理に、何かを変える必要はありません。
でも、もし、今の関係の中で、ずっと苦しさを抱えてきたのなら……。
自分の気持ちに気づき、少しずつ行動が変わっていくことで、新しい「流れ」が生まれていきます。新しい流れが始まるというのは、何かを手放すことであると同時に、新しい何かを受け取ることでもあるのだと思います。
そのとき、あなたを縛ったり、苦しめたりしてきた関係の人は、もしかしたら離れていくかもしれません。
そしてなによりも、より自分らしくなったあなたのことを、心から応援してくれる人や、本当に大切にしてくれる人と出会う。
その可能性は、今までより確かに高まっていくのだと、私は考えています。
「自分軸」と聞くと、「他人軸をきっぱり“捨てなければ”いけない」と感じる方もいるかもしれません。
でも、それは少し違うと思います。
自分軸を育てることは、他人軸から完全に抜け出すことではありません。
むしろ、自分の気持ちに気づけるようになると、
「相手は、今どう感じているだろう」と、相手の立場に立って考える力
——いわば、わがままさとは違う、健やかなほうの他人軸が、かならず育っていきます。
そして、あなたがこれまで「人のために」と動いてきた過去の行動を振り返ってみると、その行動の中に、実は“あなた自身が求めていたもの”が隠れていることがあります。
「誰かの役に立ちたい」「大切にしたい」——その思いは、あなたが“本当に大事にしたいこと”の、ひとつの形だったのかもしれません。
だから、自分軸が育っていくこと。それは「他人軸との決別」することではなく、
「他人軸の中から、“自分が大切にしたいこと=自分軸”を見つけ、育てていく」ことができます。
そう考えると、これまで人に尽くしてきた時間も、決して無駄なことではなく、自分が何を求め、何を感じていたかを知る大切な手がかりだった、と考えることもできるのではないでしょうか。
とはいえ、「自分が本当に求めているもの」は、探そうとしてもすぐには見つからないことが多いと思います。
「このままじゃいけない」とは思うけど、「では、どうなりたいの?」と聞かれると、言葉に詰まってしまいます。
そういうときに、ひとつ、試してみてほしい方法があります。
それは、「本当はどうしたいか」を直接さがすのではなく、今あなたの心の中で響いている“命令”から逆算してみる、というやり方です。
たとえば、こんな声です。
「迷惑をかけてはいけない」
「ちゃんとしなければいけない」
「もっと頑張らなければいけない」
こうした命令を、ためしにひっくり返してみます。
◇「迷惑をかけてはいけない」 → 本当は、誰かに頼ったり甘えたりしたいのかもしれません。
◇「ちゃんとしなければいけない」→ 本当は、そのままの自分を認めてほしいのかもしれません。
◇「もっと頑張らなければ」→ 本当は、「もう十分やってきたね」と認めてほしいのかもしれません。
頭の中の命令が強ければ強いほど、その裏側にはあなたが長いあいだ我慢してきた「本当の気持ち」が隠れていることがあります。
そしてもうひとつ、こんな問い方もあります。
「嫌われないこと」は、あなたの人生においてどんな意味を持っているのだろう——と。
その奥には、たとえば「安心していたい」「自分の存在を認めてほしい」といった、もっと深いところにある願いが、見えてくるかもしれません。
ただ、こうして「本当は頼りたかったんだ」と気づけたとしても、それを実際の行動に移していくのは、また別の、もう一歩勇気がいる作業になります。
「今のやり方で安心していた部分」と、「新しくやってみようとするときの不安」——そのあいだで、心が揺れるからです。
そのあたりは、後編でゆっくり考えていけたらと思います。
最後に、こうした気づきや整理をひとりで進めるのが難しいと感じるときは、誰かといっしょに行うこともできます。
カウンセリングというのも、「あなたが何を感じ、何を求めているのか」を、いっしょに見つけ育てていく。そんな愛のある優しい方法の一つだと思います。
他人軸で生きてきたことは、あなたがまわりの人たちを大切にしようとしてきた、その証でもあります。
その優しさを、これからは、少しだけ自分のほうにも向けてみる。
「私は今、何を感じているんだろう」「本当は、どうしたかったんだろう」
——そう問いかけてみる。すぐにうまい答えが出なくても全然大丈夫です。
なぜなら、こうしてここまで記事を読んでくださっている今も、自分の小さな「嫌だな」「いいな」に、少しでも気が向きはじめているからだと思うからです。
もし、「ひとりでは、自分の気持ちにうまく気づけない」「命令の奥にあるものが、どうしても見えてこない」と感じたなら、カウンセリングというあたたかな場所を思い出していただけたら嬉しいです。
うまく言葉にできなくても大丈夫です。話したくないことは、話さなくて構いません。お名前も、ニックネームのままで構いません。
当相談室に勇気を出して来てくださる方には、長いあいだ人に合わせて生きてきた、という方も少なくありません。
どんな年齢の方であっても、いまから始められる一歩から進んでいくことができます。
あなたが、あなた自身の小さな声に気づいていくこと。そして、その道のりを一緒に歩かせていただけることを願いながら前半を終わりたいと思います。