自分も他人も信用できない、無意識に判断している「心の引き算」に気づきましょう
「読むカウンセリング」は、アダルトチルドレン(AC)やHSPなど、生きづらさを感じやすい方に向けた、セルフケアのための読み物です。
さまざまな心理療法や心理学の理論、そして“なりた自身”がこれまでのフィールドワークの中で出会ってきた経験や気づきをもとに、時間をかけて丁寧に作成しています。
ページを読むこの時間が、あなたにとって小さなカウンセリングのような時間になることを願って、複数の心理療法の知見を参考にしながら、ひとつひとつの言葉を大切に綴りました。
遠くにいても、誰かが自分のことを理解しようとしてくれている。
そんな感覚を、少しでも受け取っていただけたら嬉しく思います。
「他人は変えられない」という言葉を聞いたことはありますか?
「変えられるのは自分だけ」という言葉も、よく語られます。
皆さまはこの言葉に
自分や相手への「引き算」が含まれていることに、気が付くでしょうか。
引き算は、私たちの心を守るために働くこともあります。
でも、引き算が働きすぎると、
これからの人生をより良くしていく可能性まで小さくしてしまうこともあります。
ここでは、私たちが無意識に自分や相手に向けている
「5つの」心の引き算を学んでいきます。
この記事を読んでいただくことで、
🍀私がどんな場面で引き算しているだろう?
🍀もしその引き算に気づいたら、私の人生はどのように変わるだろう?
そんな、これからの一歩を考えることができます。
◇どうせ私なんて何をやってもダメだ
◇この人はこういう人だから変わりっこない
◇あぁ、きっと無理だろうな…
何かに挑戦しようとするとき。
誰かと話し合いが必要なとき。
ふと将来を考えるとき…
そんなような言葉が、頭の中にふっと浮かぶことはないでしょうか。
こうした自分や相手、そして未来の可能性を引き算する考え方を、
心理学では「引き算(ディスカウント)」と呼びます。
私たちは知らないうちに、
さまざまな場面で「引き算」をしています。
引き算には、5つの種類があります。
①自分の存在の引き算
・どうせ私なんて、何をやってもダメだ
・あの人と比べて、私なんか…
このように、
自分という存在が小さく感じたり、
他人と比べて落ち込んだりして、
生きる気力が湧かなくなる引き算です。
②出来事の“意味”の引き算
・そんな大したことじゃない
・もっと頑張らないと、認めてもらえない
自分がしたことの価値や、
相手がしてくれた行動の意味を、小さくしたり、
受け取ることを拒否してしまう引き算です。
③問題解決の引き算
・もう私の悩みは絶対に解決できない
・行動したって無意味だから、向き合うのはやめよう
本当は変えていけるかもしれない問題も、
まだ試していない方法も、
最初からすべてあきらめてしまう引き算です。
④他人の存在の引き算
・どうせ分かってもらえない
・他人を信用するのはやめよう
相手と話し合うことや、
人との関係の中で生まれる可能性を、
最初から無いものにしてしまう引き算です。
⑤未来の可能性の引き算
・もうこの先も何も変わらない
・頑張ったって意味がないじゃないか
まだ完全には決まってはいない未来を、
今の現状だけで決めてしまう引き算です。
私たちは、思っている以上にたくさんの「引き算」をしています。
そしてその引き算は、自分の可能性だけでなく
相手を信頼する可能性まで小さくしてしまうことがあります。
だからこそ、まずは一度立ち止まって
「私はどんな引き算をしているのだろう」
と気づくことから始めることができます。
いまの私の中には、どんな「引き算の言葉」が浮かんでいるでしょうか。
時々、カウンセリングの中で
相談者さんからこんな言葉を聞くことがあります。
「他人は変えられないですよね」
たしかに、この言葉には説得力があります。
他人をコントロールすることはできませんし、
相手を変えようとするほど私たちは疲れてしまいます。
自己啓発の本でも
「他人は変えられない。だから自分を変えよう」
という言葉を目にします。
多くの方が、この考え方は正しいと感じているのではないでしょうか。
でも、ここで少しだけ立ち止まって考えてみてほしいと思います。
もしこの言葉が
「他人の存在の引き算」
から出ているものだとしたら?
そして心のどこかに、
「自分には何もできない」
という自分の可能性の引き算があるとしたら?
そうなると、私たちに残された生き方は
「ただ我慢する」ことだけになってしまいます。
その結果、我慢を続けるうちに身も心も疲れ切ってしまうかもしれません。
(1)自己啓発では、他人に向けていた意識を自分の行動を変える方向へ向け直すことを勧めています。
(2)引き算から起こる「他人は変えられない」という考えの背景には、「人は信用できない」という気持ちが隠れていることがあります。
そのため、悩みを一人で抱え込んだり、我慢するしかないと感じてしまうことがあります。
とくに、
◇ご自身をアダルトチルドレンだと感じる方
◇傷つくような体験を何度も経験した方
◇自分が無力に感じる方
そうした方ほど、自分だけでなく他人に対しても
たくさんの引き算が行われている可能性があります。
ここまで「心の引き算」について見てきました。
・自分の存在が小さく思えたり
・相手のことを信用できなかったり
・未来に希望を持てなかったり…。
こうした自分の中にある「引き算」に気づくと
「私は自己肯定感が低いのかも」
そう感じる方もいるかもしれません。
でも、引き算をすることには“ある大切な理由”があります。
それは――
「これ以上、心が傷つかないように身につけてきた考え方」
でもあります。
たとえば――
🍀過去に失敗したり怒られたりした経験が重なると…
→「どうせ私なんて」と思う方が、期待して傷つくよりもダメージが少なく感じるかもしれません。
🍀相手に傷つけられた経験があると…
→「他人は信用しない」と思う方が、これ以上失望しなくて済むかもしれません。
🍀毎日不安を抱え続けると…
→「この先もきっと無理だろう」と思う方が、希望を持つ怖さを感じなくて済むかもしれません。
つまり「心の引き算」は、
私たちが弱いから生まれるものではなく、自分の心を守るために働いてきたものとも言えるのです。
ただ、その引き算がこれからも続くと、
本当はまだ残っている
これからの人生をより良くしていくための
「可能性」まで失くしてしまいます。
だから大切なのは、
「引き算をやめよう」と無理に変えることではなく、
ネガティブ思考を無理にポジティブに変えることでもなく、
まずは、少しだけ立ち止まって
「私は、自分や他人に対してどんな引き算をしているだろう」
と、少しだけでも考えてみることから
これからのよりよい人生を始めていくことができます。
ここまで読んでくださった方のために、
自分の中にある「引き算の傾向」を振り返る、簡単なワークシートを作りました。
数分で終わるものなので、
よかったら気軽な気持ちでチェックしてみてください。
取り組むときは、次の3つのポイントを意識してみてください。
①あまり時間をかけず、数分で直感的に〇をつけてみること
②「今の自分だったらどう感じるか」を大切にすること
③数値が高いからといって「ダメ」と考えるのではなく、これからどう向き合っていくかに目を向けるヒントとして使うこと
このワークは、自分を責めるためのものではなく、
「私はどんな引き算をしているのだろう」
と気づくための小さなきっかけとして作りました。
正解・不正解はありません。
どうぞ安心して取り組んでみてください。
ワークシートを通して、
皆さまの心にはどんな「引き算の傾向」がありましたか。
ワークシートを使うことで、「これからの自分には何ができるのか」
そうした“これからの一歩”を考えることができます。
そこで、こんな質問をさせていただきます。
『もし、今つけた数字が<1だけ小さくなる>としたたら、どんな考え方や行動があるでしょうか。』
①自分の存在の引き算
たとえば「8」をつけた方が、「7」になるとしたら…
💡「どうせ私なんて」と思ったときに
→「そう思っている自分がいるな」と心のなかで呟いてみる
💡たとえ小さなことでも
→「今日はこれができた」と一つでも思い出してみる
②出来事の意味の引き算
「そんな大したことじゃない」と思いやすい人が「1」だけ数字が小さくなるとしたら…
💡誰かに褒められたとき
→「そんなことないですよ」と否定する前に「ありがとうございます」と言ってみる
💡何かを頑張ったとき
→「まあまあかな」だけで終わらず、「自分なりには頑張ったかもしれない」と考えてみる
③問題解決の引き算
「もう無理だ」と感じやすい方が「1」だけ数字が小さくなるとしたら…
💡「どうせ解決できない」と思ったとき
→「“今は”まだ答えが見つかっていないだけかもしれない」と考えてみる
💡すべてを一度に解決しようとするのではなく
→「今できる小さな一歩は何だろう」と考えてみる
④他人の存在の引き算
「どうせ分かってもらえない」と感じやすい方が「1」だけ数字が小さくなるとしたら…
💡「話しても無駄」と思ったとしても
→少しだけ自分の気持ちを言葉にしてみる
💡すべて理解してもらおうとするのではなく
→「一部だけでも伝わればいい」と思って話してみる
⑤未来の可能性の引き算
「どうせ変わらない」と思いやすい方が「1」だけ数字が小さくなるとしたら…
💡「きっと無理だろう」と思ったとき
→「本当にそうだろうか?」と一度だけ問いかけてみる
💡未来を大きく変えようとするのではなく
→「今日は何を1つしてみようか」と考えてみる
こうして見ていくと、
数字を1つ変えるために必要なのは、
大きな勇気ではなくて、とても小さな変化であることがわかります。
そしてその小さな変化は、
「自分の引き算に気づくこと」から、ひとつづつ始まっていきます。
たとえ行動してみたとしても、
自分が思うような変化が起きないこともあるかもしれません。
例えば、相手に変わってほしくて正直に自分の気持ちを話したとしても、
相手は応えてくれないかもしれません。
相手にもまた、相手なりの考えや選択があるからです。
それでも、引き算から何もしないことと、
たとえうまくいかなかったとしても
「それでも自分なりによくやった」
と思えることでは、
これからの自分との向き合い方が少しずつ変わっていくことがあります。
そして、その小さな積み重ねがいつの間にか
「まだ出来ることがあるかもしれない」
という感覚につながり、
やがて「これからの私は何を大切にして生きたいのだろう」
という人生への問いに、
自分自身の選択と納得をもって
向き合えるようになっていくことができます。
もし、このワークを通して
「自分の引き算のクセに気づいた」
「でも、どう向き合えばいいのか分からない」
そう感じた方もいるかもしれません。
なりた心理相談室のカウンセリングでは、
そうした引き算の考え方から、
「これからどんな可能性が私に残っているのか」
「今から、何を始めることができるのか」
そういった“変化の可能性”をカウンセラーとともに、じっくりと考えていくことができます。
一人で考えていると
どうしても同じ考えの中をぐるぐる回ってしまうことがあります。
でも、誰かと対話することで
自分では気づかなかった見方や感覚が、少しずつ見えてくることもあります。
よろしければ、皆さまの新しい人生の一歩をお手伝いさせてください。