自分も他人も信用できない
無意識に判断している「心の引き算」に気づきましょう
「読むカウンセリング」は、アダルトチルドレン(AC)やHSPなど、生きづらさを抱えやすい方に向けた、セルフケアのための読み物です。
様々な心理療法・理論、そして“なりた自身”が自らのフィールドワークで経験してきた知見を基に、時間をかけて作成しています。
ページを読むこの時間が、あなたにとっての小さなカウンセリングのよう感じらるよう、多くの心理療法をもとに、丁寧に綴りました。
遠くにいても、誰かが自分を理解してくれている――そんな感覚を、少しでも受け取っていただけたらうれしいです。
『他人は変えられない』という言葉を聞いたことはありますか?
『変えられるのは自分自身だけ』という言葉も、よく一緒に語られます。
皆さまは、この言葉に
自分や相手への「引き算」が含まれていることに、気が付くでしょうか。
引き算は、私たちの心を守るために働くこともあります。
でも、時にはこれからの人生をより良くしていく可能性まで小さくしてしまうこともあります。
ここでは、私たちが無意識に自分や相手に向けている5つの心の引き算についてみていきます。
・私がどんな場面で引き算しているだろう?
・もしその引き算に気づいたら、人生はどのように変化していくだろう?
そんなことを、一緒に考えていきましょう😊
▢どうせ私なんて何をやってもダメだ
▢この人はこういう人だから変わりっこない
▢あぁ、きっと無理だろうな…
何かに挑戦しようとするとき。
誰かと話し合いが必要なとき。
ふと将来を考えるとき…
そんなような言葉が、頭の中にふっと浮かぶことはないでしょうか。
こうした
自分や相手、そして未来の可能性を引き算する考え方を、
心理学では「引き算(ディスカウント)」と呼びます。
私たちは知らないうちに、
さまざまな場面で「引き算」をしています。
引き算には、いくつかの種類があります。
①自分の存在の引き算
「どうせ私なんて、何をやってもダメだ」
「私にはそんな力はないよ」
「きっと失敗するに決まっている」
このように、
自分という存在が小さく感じたり、
自分の可能性を先に小さくしてしまう引き算です。
他人と比べて落ち込んだり、生きる気力が湧かなくなることもあります。
②出来事の意味の引き算
「そんな大したことじゃない」
「もっと頑張らないと認めてもらえない」
「相手の褒め言葉を素直に受け取れない」
自分がしたことの価値や、
相手がしてくれた行動の意味を、小さくしたり、
そのまま受け取ることを難しくしてしまう引き算です。
本当はそこにあるのかもしれない
評価や好意の意味を、自分で小さくしてしまうことがあります。
③問題解決の引き算
「もうこの悩みは絶対に解決できない」
「考えても無意味だから、向き合うのはやめよう」
「考えることも、行動することもやめよう」
本当は考える余地があるかもしれない問題も、
最初からすべてあきらめてしまう引き算です。
まだ試していない方法や、
これから見つかるかもしれない解決の可能性まで、
先に小さくしてしまうことがあります。
④他人の存在の引き算
「あの人はこういう人だから話しても無駄さ」
「どうせ分かってもらえない」
「他人を信用するのはやめよう」
相手と話し合うことや、
人との関係の中で生まれる可能性を、
最初から無いものにしてしまう引き算です。
本当はまだ分からない相手の理解や変化の可能性を、
先にあきらめてしまうこともあります。
⑤未来の可能性の引き算
「あぁ、きっと無理だろうな」
「どうせこれからも変わらない」
「頑張ったって意味がないじゃないか」
まだ完全には決まってはいない未来を、
今の現状だけで決めてしまう引き算です。
その結果、
本当は変化するかもしれない未来の可能性まで、
自分で小さくしてしまうことがあります。
私たちは、
思っている以上にたくさんの「引き算」をしています。
そしてその引き算は、
自分の可能性だけでなく
相手や未来の可能性まで小さくしてしまうことがあります。
だからこそ、まずは一度立ち止まって
「私はどんな引き算をしているのだろう」
と気づくことから始めてみませんか。
いまの私の中には、どんな「引き算の言葉」が浮かんでいるでしょうか。
時々、カウンセリングの中で
相談者さんからこんな言葉を聞くことがあります。
「他人は変えられない」
私は、この言葉“自体”は正しいと思います。
他人をコントロールすることはできませんし、
相手を変えようとするほど私たちは疲れてしまいます。
近年の自己啓発の世界では
「他人は変えられない。だから自分を変えよう」
という言葉を目にします。
多くの方が、この考え方は正しいと感じているのではないでしょうか。
でも、ここで少しだけ立ち止まって考えてみてほしいと思います。
もしこの言葉が
「他人の存在の引き算」
から出ているものだとしたら?
そして心のどこかに、
「自分には何もできない」という
可能性や解決の引き算があるとしたら?
そうなると、
私たちにそこされるのは
「ただ我慢する」ことだけになってしまいます。
その結果、
気づかないうちに身も心も疲れ切ってしまうかもしれません。
とくに、
▢アダルトチルドレンだと感じる方
▢傷つくような体験を何度も経験した方
▢自分が無力に感じている方
そうした方ほど、自分だけでなく他人に対しても
たくさんの引き算が行われている可能性があります。
ここまで「心の引き算」について見てきました。
・自分の存在が小さく思えたり
・相手のことを信用できなかったり
・未来に希望を持てなかったり…。
こうした自分の中にある「引き算」に気づくと
「私は自己肯定感が低いのかも」
そう感じる方もいるかもしれません。
でも、カウンセリングを通して、
私は少し“違う見方”もあるのではないかと感じています。
もしかすると、私たちの中にある引き算は、
これ以上、心が傷つかないように身につけてきた考え方
なのかもしれません。
たとえば――
🍀うまくいかなかった経験が重なると…
→「どうせ私なんて」と思う方が、
期待して傷つくよりもダメージが少なく感じるかもしれません。
🍀相手に傷つけられた経験があると…
→「他人は信用しない」と思う方が、
これ以上失望しなくて済むかもしれません。
🍀毎日不安を抱え続けると…
→「この先もきっと無理だろう」と思う方が、
希望を持つ怖さを感じなくて済むかもしれません。
つまり「自分や他人の引き算」は、
私たちが弱いから生まれるものではなく、自分の心を守るために働いてきたもの
とも言えるのです。
ただ、その引き算がこれからも続くと、
本当はまだ残っている
これからの人生をより良くしていくための
「可能性」まで失くしてしまいます。
だから大切なのは、
・「引き算をやめよう」と無理に変えることではなく
・ネガティブ思考を無理にポジティブに変えることでもなく
まずは、少しだけ立ち止まって
「私は、自分や他人に対してどんな引き算をしているだろう」
と、静かに気づいていくことから
これからの人生を始めていくことができます。
ここまで読んでくださった方のために、
自分の中にある「引き算の傾向」を振り返る
簡単なワークシートを作りました。
数分で終わるものなので、
よかったら気軽な気持ちでチェックしてみてください。
取り組むときは、次の3つのポイントを意識してみてください。
①あまり時間をかけず、数分で直感的に〇をつけてみること
②「今の自分だったらどう感じるか」を大切にすること
③数値が高いからといって「ダメ」と考えるのではなく、
これからどう向き合っていくかに目を向けるヒントとして使うこと
このワークは、
自分を責めるためのものではなく、
「私はどんな引き算をしているのだろう」
と気づくための小さなきっかけとして作りました。
正解・不正解はありません。
どうぞ安心して取り組んでみてください。
ワークシートを通して、
自分の中にある「引き算の傾向」が少し見えてきましたでしょうか。
ここで大切なのは、なにかを大きく変えようとすることではありません。
悩んでいるときほど、急に大きなことを始めて挫折します。
もし、今つけた数字が
「1だけ小さくなる」としたら――
どんな考え方や行動があるでしょうか。
少しだけ例を見てみましょう。
① 自分の存在の引き算
たとえば「8」をつけた方が、「7」になるとしたら…
💡「どうせ私なんて」と思ったときに
→「そう思っている自分がいるな」と心のなかで呟いてみる
💡たとえ小さなことでも
→「今日はこれができた」と一つでも思い出してみる
※どんなことでも、無理をすると逆効果になります。
自分を大きく変えるのではなく、
少しだけ方向を変えてみるようなイメージです。
② 出来事の意味の引き算
「そんな大したことじゃない」と思いやすい人が「1」だけ数字が小さくなるとしたら…
💡誰かに褒められたとき
→「いえいえ」と否定する前に「ありがとうございます」と言ってみる
💡何かをやり終えたとき
→「まあまあかな」だけで終わらず、「自分なりには頑張ったかもしれない」と考えてみる
③ 問題解決の引き算
「もう無理だ」と感じやすい方が「1」だけ数字が小さくなるとしたら…
💡「どうせ解決できない」と思ったとき
→「“今は”まだ答えが見つかっていないだけかもしれない」と考えてみる
💡すべてを一度に解決しようとするのではなく
→「今できる小さな一歩は何だろう」と考えてみる
④ 他人の存在の引き算
「どうせ分かってもらえない」と感じやすい方が「1」だけ数字が小さくなるとしたら…
💡「話しても無駄」と思ったとしても
→少しだけ自分の気持ちを言葉にしてみる
💡すべて理解してもらおうとするのではなく
→「一部だけでも伝わればいい」と思って話してみる
⑤未来の引き算
「どうせ変わらない」と思いやすい方が「1」だけ数字が小さくなるとしたら…
💡「きっと無理だろう」と思ったとき
→「本当にそうだろうか?」と一度だけ問いかけてみる
💡未来を大きく変えようとするのではなく
→「今日は何を1つしてみようか」と考えてみる
こうして見ていくと、
数字を1つ変えるために必要なのは、
大きな勇気ではなくて、とても小さな変化です。
そしてその小さな変化は、
「自分の引き算に気づくこと」
から、ゆっくり始まっていきます。
たとえ行動してみたとしても、
自分が思うような変化が起きないこともあるかもしれません。
例えば、相手に変わってほしくて
正直に自分の気持ちを話したとしても、
相手は応えてくれないかもしれません。
相手にもまた、
相手なりの考えや選択があるからです。
それでも、
引き算から何もしないことと、
たとえうまくいかなかったとしても
「それでも自分なりによくやった」
と思えることでは、
これからの自分との向き合い方が
少しずつ変わっていくことがあります。
そして、その小さな積み重ねが
いつの間にか
「まだ出来ることがあるかもしれない」
という感覚につながり、
やがて
「私は本当は何を大切にして生きたいのだろう」
という問いに、
自分自身の選択と納得をもって
向き合えるようになっていくのかもしれません。
もし、このワークを通して
「自分の引き算のクセに気づいた」
「でも、どう向き合えばいいのか分からない」
そう感じた方もいるかもしれません。
なりた心理相談室のカウンセリングでは、
無理に考え方を変える場所ではありません。
むしろ、
・なぜその引き算が生まれたのか
・どんな経験がその考え方を支えてきたのか
・これからどんな可能性が私に残っているのか
そうしたことを、
一緒にじっくりと見つめていく時間です。
一人で考えていると
どうしても同じ考えの中をぐるぐる回ってしまうことがあります。
でも、誰かと対話することで
自分では気づかなかった見方や感覚が
少しずつ見えてくることもあります。
もしよければ、
あなたの中にある「引き算の言葉」について
一度ゆっくり話してみませんか。