当事者性に求められるもの
メンタルヘルスの課題を抱える人々が集まり、これまでの経験を分かち合う場は、自身の人生を見つめる心の棚卸しの作業と同時に、どんな内容であれ仲間に受け入れられるという安心感の両方が満たされる大切な機会であると考えています。
それは、たとえ意見交換会や勉強会であっても、安心安全の空間をつくるためのグランドルールとして共通するものがあると私は考えています。
当会の強み=「対話型」
当会のファシリテーションは、参加者同士の共通点を見つけることを大切にしています。なぜなら、私たちは何のために集まっているのか。そしてこの時間は勝ち負けや正しさを議論する場所でなく、互いの人格を尊重し合う場であることを常に感じながら参加してほしいからです。
この方法は、心理療法の一つである「システムズ・アプローチ」や「ナラティブ・セラピー」の諸理論を参考にしています。
繊細な私たちが分かち合うために
メンタルヘルスの自助団体では、まれに他の仲間のお話を聴いて、つらい気持ちになったり、否定的な気持ちになったりすることがあります。繊細な心を扱う場所だからこそ、お互いが安心して話せる雰囲気づくりが大切なのですが、時としてそれが難しいこともあります。
例えば、参加者同士がまだ十分に打ち解けていない場合や、つらい気持ちを抱えている仲間が、それをうまく言葉で表現できない場合など、様々な事情があります。
こ安心して話せる場が作れないと、自分の経験を話しているうちに、いつの間にか他の仲間を責めるような話になってしまったり、まるで議論をしているような、落ち着かない場になってしまいます。
苦い思いと新たな発見
過去にファシリテーションをしていた時に、参加者同士の意見が食い違って、ピリピリとした雰囲気になってしまったことがありました。
その時の私は、この場をどうしたら良いか分からず、最後まで参加者の方々に居心地の悪い思いをさせてしまったと思います。
その後、色々と試行錯誤する中で、問題が起こったときにその人本人に原因を求めるのではなく、ピリピリとした雰囲気が生まれてしまう悪循環(仕組み)が相互関係によって生まれていることに気が付きました。
そして、参加者の方々が生い立ちや経験は違っても「回復したい」と願う気持ちが同じであることに着目し、違いを認め合うことを強く求めるのではなく、共通点を見つけて、それを伝える(確認する)ようなファシリテーションの方法を変えるようになりました。
すると、参加者の方々から好意的なご感想をいただけるようになりました。
分かち合うとは
仲間の経験や語りの中には、私たちがより良い未来をつくるためのヒントがたくさん眠っていると考えています。それは、当事者団体だからこそ実現できるものだと思います。
そんな新たな気づきのために、批評的な気持ちを一旦わきに置いて仲間の話を聴いてみる。そんな前向きな気持ちになれるようなファシリテート方法を今日まで研鑽し続けています。
この「共通点探し」というファシリテーション方法は、私たちの活動のすべてにおいて、とても大切な財産となっています。